新しいアイデアやプロジェクトを実現するには、分かりやすく整理された「企画書」の存在が欠かせません。上司やクライアントに提案を通すためには、論理的かつ説得力のある構成で情報を伝える必要があります。
本記事では、企画書の書き方を分かりやすく解説し、活用できるテンプレートや作成時のポイントについて紹介します。


企画書とは、新たな取り組みや施策について提案し、関係者に理解と協力を得るための文書です。目指すべきゴールや背景、具体的な実施内容などを論理的に整理して記載する必要があります。特にビジネスにおいては、企画書を通じて投資判断や意思決定が行われるため、内容の精度と説得力が求められます。
企画書には明確な目的があります。それは「提案を実行に移すための承認を得ること」です。したがって、感覚的な表現や曖昧な内容は避け、根拠のある情報を基に構成することが重要です。また、テンプレートを使うことで書式や内容の抜け漏れを防げます。
企画書と提案書は似ているようで、役割と内容に違いがあります。企画書は「何を、なぜ行うのか」に重点を置き、目的達成のための具体策を提示する資料です。一方で提案書は、サービスや商品の導入などの意思決定を促すことが主な目的です。
企画書は社内向けに使用されることが多く、実施の可能性や方法論に重点を置きます。対して提案書は、クライアントなどの外部に向けてプレゼンテーションすることが多く、価格やメリットを強調した営業的要素を多く含みます。
つまり、企画書はプロジェクト実現に向けた「設計図」、提案書はそのプロジェクトに対する「推薦状」といった役割の違いがあります。

企画書の作成においては、「現状分析」「ゴールの設定」「スケジュール」「収支計画」など、各構成要素を論理的かつ体系的に盛り込むことが求められます。これらの要素を適切に構成することで、読み手が企画の全体像を正確に把握しやすくなり、実行への理解と共感を得る助けになります。
企画をスタートする第一歩として欠かせないのが現状分析です。これにより、なぜ今この企画が必要なのか、その背景と根拠を明らかにすることができます。
現状分析では、自社の置かれている状況、業界や市場の動向、顧客のニーズなどを多角的に整理し、課題やチャンスを明確にします。単なる主観や経験則ではなく、社内データや市場調査、統計情報などの定量的な裏付けを活用することで、より説得力のある内容になります。
また、課題が複数ある場合は、優先順位をつけて記述すると、企画の焦点がぶれず、読み手の理解も深まります。
現状分析の結果を受けて、次に企画の目的とゴールを設定します。
ここで重要なのは、「なぜこの企画を実施するのか」と「最終的にどんな成果を目指すのか」を明確に言語化することです。目的は抽象的になりがちですが、誰のどのような課題をどう解決するか、という視点で具体的に示すことが求められます。
また、ゴールは数値で測定可能な形に落とし込むと、達成度合いや効果測定がしやすくなります。例えば「売上拡大」ではなく「半年以内に売上を20%増加させる」といった形が望ましいです。
これにより、企画の方向性が明確になり、実行フェーズでのブレを防ぐことができます。
目的とゴールが明確になったら、それを実現するための具体的なアクションを策定します。
アクションは、何を・いつ・どのように実行するのかを時系列で整理し、各ステップにおける担当者を明記することが重要です。誰が何を担当するかが曖昧なままでは、実行段階での混乱や責任の所在の不明確さにつながり、企画の失敗を招く可能性があります。部署単位ではなく、できる限り個人レベルまで落とし込むと実行力が高まります。
また、各タスクの難易度や工数も併記すると、計画の現実性が伝わりやすくなります。企画書には、タスクごとのToDoリストやWBS(作業分解構成図)を添えるとより効果的です。
アクションと同様に重要なのが、実行スケジュールの策定です。
企画書には、全体のタイムラインを見える化した図や表を盛り込み、プロジェクトがどのような流れで進行するかを明確に示す必要があります。
ガントチャートやカレンダー形式で工程と期間を整理することで、各タスクの連携や依存関係も可視化できます。スケジュールを立てる際には、無理のない進行であるかどうか、また途中で調整が可能な柔軟性があるかも確認しましょう。
さらに、主要なマイルストーン(中間成果地点)やレビュータイミングを設定することで、進捗管理や課題の早期発見が容易になります。
企画が実現可能かどうかを判断するためには、費用と効果のバランスを示す「収支シミュレーション」が不可欠です。
初期費用(設備投資、人件費など)や運用コスト(維持費、追加コスト)を明確にし、それに対して期待される売上やコスト削減効果を見積もる必要があります。これらの数値は、可能な限り根拠を明示し、過去の実績や市場調査のデータに基づいて算出することが求められます。
また、損益分岐点やROI(投資対効果)などの指標も提示すると、より納得感のある企画書に仕上がります。読み手が一目で理解できるよう、表やグラフを活用した視覚的な資料作成もおすすめです。
どんなに優れた企画であっても、実行段階ではさまざまなリスクが想定されます。そのため、リスク管理の観点から「想定されるリスク」と「具体的な対応策」を企画書に記載することが求められます。
リスクには、スケジュール遅延、予算超過、外部要因による中断、関係者間の認識齟齬など、さまざまな種類があります。これらに対して、事前にどう備えるか、万一発生した際にどう対処するかを明文化することで、計画の信頼性が向上します。
特に、重大な影響を及ぼすリスクには、代替手段(プランB)や回避策をあらかじめ提示しておくと、読み手の安心感と納得感が高まります。

わかりやすい企画書を作るためには、内容の正確性や論理性だけでなく、見た目の工夫や伝え方の工夫も欠かせません。どれほど優れたアイデアであっても、読み手がすぐに理解できない構成やデザインでは、説得力が半減してしまいます。特にビジネスシーンでは、上司やクライアントが短時間で内容を判断できるように、要点を押さえて視覚的に整理された資料が求められます。
ここからは、企画書の質を高めるための具体的な工夫やテクニックを、順を追って紹介します。
企画書を論理的かつ一貫性のある内容に仕上げるためには、ビジネスフレームワークの活用が効果的です。フレームワークを使うことで、思考の抜けや偏りを防ぎ、情報を整理して伝えることができます。
3C分析やSWOT分析、6W2Hなどのフレームワークは、現状把握から戦略立案、実行計画までを一貫して整理するのに役立ちます。既存の型を使うことで、読み手にも構造が伝わりやすくなり、説得力が高まるというメリットもあります。
3C分析は、「Customer(顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの視点から現状を整理し、ビジネス戦略を立てるフレームワークです。
企画書で3C分析を活用することで、市場における自社の立ち位置や、狙うべきターゲット、競合との違いを明確にすることができます。顧客についてはニーズや購買行動、競合については強みや弱み、自社については提供価値やリソースを分析します。これにより、「なぜ今この企画を行うのか」「市場のどのポジションを狙うのか」といった説明に説得力を持たせることが可能です。
客観的な視点から戦略の方向性を定められる点も大きな利点です。
SWOT分析は、「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4つの要素に分けて、自社やプロジェクトを分析するフレームワークです。
内部要因(S・W)と外部要因(O・T)を組み合わせて戦略を導き出せるため、非常に実践的です。企画書でこの分析を取り入れることで、読み手に「この施策は適切か?」「どのような強みを活かし、どんなリスクを回避するのか」といった点を明確に伝えることができます。
特にSWOTクロス分析を活用して、「強み×機会」のように戦略に直結する視点で整理すれば、企画の有効性が一段と伝わりやすくなります。
6W2Hは、プロジェクトの計画を多角的に検討するためのフレームワークで、「Who・Whom・What・Why・When・Where・How・How much」の8項目を整理します。
企画書に6W2Hを活用すると、抜け漏れのない計画立案が可能になります。「誰が(Who)」「何を(What)」「なぜ(Why)」といった情報を明確に記述することで、読み手がプロジェクトの全体像を把握しやすくなります。
また、「どこで(Where)」「いつ(When)」「どうやって(How)」「いくらで(How much)」など、実行面における詳細も整理することで、実現可能性やリスク管理の視点でも納得感のある企画になります。特に社内外の関係者が多いプロジェクトでは、6W2Hでの明確な説明が信頼性向上に直結します。
企画書は、感覚や抽象的な表現ではなく、定量的なデータに基づいて作成することが重要です。「売上が伸びる見込みがある」よりも「売上が前年比20%向上する見込みがある」といったように、数値で示すことで企画の説得力が格段に上がります。
また、目標や成果指標(KPI)を定量的に記述することで、進捗の可視化や評価がしやすくなります。市場規模、顧客数、コスト、ROI、リード獲得数など、関連するデータを集め、可能な限り根拠付きで提示しましょう。
読み手は数値情報によって「この企画は実行する価値があるか」を短時間で判断できます。数値の根拠を資料や出典付きで示せば、さらに信頼性が増します。
文章だけの企画書は理解に時間がかかり、読み手の集中力も続きにくいため、適切な箇所で図や表、グラフを活用することが効果的です。
プロジェクトの工程はガントチャート、売上予測は棒グラフ、競合比較は表など、内容に応じた可視化手法を取り入れると、情報が瞬時に伝わります。ビジュアルは企画の全体像を整理する役割も果たし、読み手の記憶にも残りやすくなります。
また、図表を入れることで紙面が整い、資料の見栄えも向上します。ただし、装飾目的ではなく、内容を補足・強化する目的で使用することが大切です。
視覚的に分かりやすく伝えることが、わかりやすい企画書づくりのカギとなります。
企画書は中身だけでなく、見た目の印象も大切です。適切な余白、統一されたフォントや色使い、見出しの階層化など、レイアウトを工夫することで、資料の読みやすさが格段に向上します。
情報が多くなりがちな企画書では、読み手が迷わずに内容を追えるように、視線誘導を意識したデザインにすることが重要です。文字だけで構成された資料よりも、図解やアイコン、色分けされたポイントを使うことで、印象に残りやすく、理解も進みます。
PowerPointやGoogleスライドなどのプレゼン資料用ソフトを使う場合は、スライド1枚ごとの情報量を適度に抑え、シンプルで視覚的に整理された構成を心がけましょう。
効率よく、かつ質の高い企画書を作成するためには、既存のテンプレートを活用するのも一つの有効な手段です。テンプレートには、必要な項目があらかじめ整理されており、記入していくだけで抜け漏れなく構成が整います。
また、フォントや色の統一、レイアウトのバランスなど、デザイン面もすでに最適化されているため、自作するよりも短時間でプロフェッショナルな資料に仕上がります。
テンプレートは、自社内で使い慣れたものや、オンライン上で提供されている業種別のものなどを活用するとよいでしょう。オリジナル要素を盛り込みつつも、基本構成はテンプレートに任せることで、誰が見てもわかりやすい企画書をスピーディに作成できます。
企画書を作成する際、テンプレートを活用することで効率的に質の高い資料を作成できます。テンプレートを提供しているサイトを活用すれば、デザインやレイアウトにかかる時間を削減でき、内容に集中することができます。
ここでは、企画書作成に便利なおすすめのテンプレートサイトを3つ紹介します。どれも無料で利用できるオプションがあり、さまざまな用途に対応しているので、プロジェクトやプレゼンに合わせたデザインが見つかるでしょう。
Microsoftが提供するテンプレートは、WordやPowerPointなどのMicrosoft Office製品と互換性が高く、ビジネスでよく使用されるスタンダードなデザインが揃っています。公式サイトには、さまざまな業種やシーンに合わせた企画書テンプレートが豊富に取り揃えられており、手軽にダウンロードしてすぐに利用することができます。
特に、Excelとの連携がしやすいため、定量的なデータを含む企画書に最適です。利用方法も非常に簡単で、少しのカスタマイズだけで即戦力の企画書を作成できます。
視覚的な要素もシンプルながら洗練されており、無駄なく情報を伝えるレイアウトが魅力です。
Microsoftのテンプレート:https://www.microsoft.com/ja-jp/office/pipc
Adobe Acrobatは、PDFファイルを扱うソフトとして有名ですが、テンプレートの作成や編集にも非常に便利です。Adobeの公式サイトには、ビジネス向けのテンプレートも数多く掲載されており、企画書を作成する際にも非常に役立ちます。
PDFで提供されているテンプレートは、編集が簡単で、特にプレゼンテーション資料や報告書などのフォーマットとして広く使われています。Adobeのテンプレートは視覚的なデザインにこだわり、色使いやフォント選びが洗練されており、プロフェッショナルな印象を与えることができます。
また、Adobe Acrobatの強みとして、PDF形式で保存してもレイアウトが崩れにくいため、チーム内での共有や顧客への提出にも適しています。
Adobe Acrobatのテンプレート:https://www.adobe.com/jp/acrobat/roc/blog/templates-of-proposal.html
Canvaは、オンラインデザインツールとして非常に人気があり、豊富なテンプレートを提供しています。企画書の作成も簡単で、ユーザーが簡単にカスタマイズできるようになっています。
Canvaでは、ドラッグ&ドロップで簡単にレイアウトを調整でき、テキストや画像、図形などを自由に配置できるため、デザインに自信がない人でも美しい企画書を作成できます。特に、企画書に必要なグラフやアイコン、イラストなどが豊富に揃っており、視覚的に魅力的な資料を作りやすいのが特徴です。
さらに、Canvaのテンプレートはほとんどが無料で使用でき、ビジネス利用にも適したシンプルで洗練されたデザインが揃っています。チームでの共同編集も可能なため、複数人での企画書作成に便利です。
Canvaのテンプレート:https://www.canva.com/ja_jp/templates/
企画書を作成する際に役立つ本は多くあります。多くの本では、企画書の構成や書き方、そして成功するためのポイントがわかりやすく解説されています。企画書作成に不安がある方や、もっと効果的に伝えたい方にとって、下記の本は必読です。それぞれの本が提供する実践的なアドバイスを取り入れながら、自分の企画書をブラッシュアップしていくことができます。
「提案書・企画書の基本がしっかり身につく本」は、企画書や提案書の基本的な構成や書き方を丁寧に解説しており、初心者にも理解しやすい内容となっています。実際のビジネスシーンで活用できる10の定番フォーマットが紹介されており、課題設定からタイトルの付け方、解決策の提示まで、具体的なステップを踏んで学ぶことができます。
また、図やイラストを多用しているため、視覚的にも理解しやすく、実践的なスキルを身につけるのに最適な一冊です。
「10分で決める!シンプル企画書の書き方・つくり方」は、短時間で効果的な企画書を作成するための方法を紹介しています。「シンプル企画書」の考え方を基に、作成者と読み手の双方にとって負担の少ない企画書の作り方を提案しています。
具体的なテンプレートや実例を交えながら、論理的で分かりやすい企画書の構成や表現方法を学ぶことができます。時間が限られているビジネスパーソンや、効率的に企画書を作成したい方にとって、非常に有用な内容となっています。
「「企画書」の基本&書き方がイチから身につく本」は、企画書の基本的な概念から実際の書き方、企画の立案方法までを網羅的に解説しています。初心者がつまずきやすいポイントを丁寧に説明しており、企画書作成の全体像を把握するのに適しています。
また、具体的な事例やテンプレートも豊富に掲載されており、実務での応用がしやすい内容となっています。これから企画書作成に取り組む方や、基本を再確認したい方におすすめの一冊です。

この記事をかいた人
八並 嶺一
エンタープライズセールスの専門家。株式会社エージェントにて、大手企業との取引量を増やし、事業拡大を牽引。その実績を背景にCHRO、COOを歴任し、組織・事業の両面から経営をリード。2020年の株式上場を経験する。2022年、インキュベーター株式会社を創業。自身が現場と経営の両軸で培ってきた「大企業営業」の知見を再現可能な仕組みに昇華すべく、2025年にエンタープライズセールス特化型サービス「アカマネ」をリリース。アカマネを通じて属人化しがちなエンタープライズセールスを、再現性ある営業基盤へと変革する支援に取り組んでいる。