営業活動において、成果を可視化するために欠かせない指標の一つが受注率です。受注率が低い場合、営業プロセスのどこかに課題がある可能性が高いため、正しい分析と改善が求められます。
本記事では、受注率の意味や計算方法、業界別の平均値、受注率を上げるための具体的な対策まで詳しく解説します。営業成果を最大化したいと考えている営業担当者やマネージャーの方は、ぜひ参考にしてください。


受注率とは、商談を行った件数に対して、実際に契約に至った件数の割合のことです。別の言い方では成約率とも呼ばれ、営業活動における成果の度合いを定量的に把握するために使われています。
受注率を算出することで、営業プロセス全体のどこに改善余地があるのかを明確にでき、戦略的な営業アクションにつなげることが可能になります。
たとえば、10件の商談を行い、3件を受注できた場合の受注率は30%となります。このように、数字として可視化することで、営業チームの成果やボトルネックを正確に把握できます。
特に法人営業では、案件の単価が高いため、少ない受注でも業績に大きな影響を与えるため、受注率の改善は非常に重要な課題となっています。

受注率の計算方法は、以下のような数式で算出できます。
【受注率(%)= 受注件数 ÷ 商談件数 × 100】
たとえば、1か月間に20件の商談を実施し、そのうち5件が受注に至った場合、受注率は25%となります。営業活動を振り返る際や、チームのKPIを評価する際には、必ずこの指標を確認する必要があります。
また、HubSpotが2024年に公開した調査レポートでは、世界中の営業担当者1,000名以上を対象に、成約率についてアンケート調査を実施しました。
その結果、全業界の平均成約率は20%という数値が示されています。これは、商談を開始したうちの5件に1件が受注に至っているという目安になります。
業界別では、下記の通りと報告されています。
バイオテクノロジー業界 | 15% |
|---|---|
ソフトウェア業界 | 22% |
金融業界 | 19% |
業界別では、商材の価格帯や営業プロセスの複雑さにより差が見られます。業界ごとの相場を把握することで、自社の営業成約率が高いのか低いのか、適切に判断するためのベンチマークとして活用できます。
参考:hubspot「How Close Rates are Shifting in 2024」
受注率が思うように向上しない背景には、営業プロセスや顧客対応における複数の課題が潜んでいます。特に、下記で挙げられる原因は、受注機会を逃す大きな原因となります。
顧客ニーズの理解不足
決裁者へのアプローチの欠如
BANT条件の確認不足
信頼関係の構築不足
失注理由の分析不足
これらの課題は、営業担当者一人のスキルだけでなく、チーム全体の営業体制や管理手法にも関係しています。適切な改善策を講じるには、まずは根本原因を明確に把握し、具体的な対応を行う必要があります。
顧客の真のニーズを十分に理解しないまま提案を行うと、的外れなアプローチになり、受注にはつながりません。
商品やサービスの説明に終始し、課題解決につながる提案ができない場合、顧客は他社を選択する可能性が高まります。特に法人営業では、顧客の業界動向や業務フローまで理解しないと、本質的な課題を捉えることは困難です。
顧客へのヒアリングを通じて、現状の問題点や期待値を丁寧に把握し、顧客視点に立った提案を行うことが受注率向上の第一歩となります。
営業プロセスの中で、決裁権を持つキーパーソンに適切にアプローチできていない場合、商談が途中で停滞したり、競合に先を越されたりするリスクが高まります。担当者レベルとのやり取りだけでは、提案内容の価値が正しく伝わらず、価格や納期の判断に必要な情報が意思決定者に届かない可能性があります。
営業活動では、早い段階から決裁者を特定し、具体的な課題に対して解決策を提示することで、納得感のある提案を行うことが求められます。
BANTとは、予算(Budget)、決裁権(Authority)、ニーズ(Needs)、導入時期(Timeline)の頭文字を取ったフレームワークであり、受注確度を判断するための基本指標です。
これらの情報を商談時に確認せずに進めてしまうと、受注の見込みが薄い案件にリソースを割くことになり、全体の効率が下がります。特に、予算や導入時期が未確定な状態では、競合との比較検討で後れを取る可能性も高くなります。
BANT条件を早期に把握し、見込みの高い案件へ優先的にアプローチする体制を整えることが重要です。
営業担当者と顧客の間に信頼関係が築けていない場合、どれだけ優れた提案を行っても受注には結びつきにくくなります。信頼が不足していると、価格交渉が難航したり、他社への乗り換えを検討されたりするリスクが高まります。
信頼関係を築くためには、単に商品情報を伝えるのではなく、課題解決への姿勢や誠実な対応、レスポンスの速さなどが重要な評価ポイントになります。
顧客との接点を継続的に持ち、パートナーとしての関係性を意識することが、受注率の向上に直結します。
過去の失注案件から学びを得ない営業チームは、同じ失敗を繰り返しやすくなります。失注理由を明確に分析しなければ、改善点が曖昧なまま次の商談に臨むことになり、再び受注機会を逃す可能性が高まります。
失注の原因には、価格競争、提案内容の弱さ、タイミングの不一致など多岐にわたる要素が含まれます。これらを記録・可視化し、チームで共有・検討することで、営業プロセスの精度を高めることができます。
特にCRMやSFAを活用して失注要因を蓄積する仕組みづくりが重要です。
受注率を向上させるためには、営業活動の各プロセスに対して明確な改善策を講じる必要があります。闇雲なアプローチではなく、計画的かつ戦略的な営業実行が求められます。
具体的には、以下のような方法が挙げられます。
明確な売上目標とKPIの設定
見込み顧客情報のデータ化と管理
受注確度に基づく優先順位の設定
顧客の課題に寄り添った提案
クロージングスキルの強化
価格とスケジュールの明確な提示
信頼関係を築くためのコミュニケーションの構築
これらの施策を一貫して実施することで、商談の質が向上し、結果的に受注率を高めることができます。
営業活動を戦略的に進めるには、明確な売上目標の設定が不可欠です。また、その目標を達成するための中間指標としてKPI(重要業績評価指標)を設定することが効果的です。
「月間受注数」や「商談化率」「訪問件数」などの指標を用いて、営業プロセスを数値で管理します。KPIが明確であれば、目標達成に向けた課題が可視化され、改善サイクルを早く回せます。
チームで共有された目標があることで、営業メンバーの行動にも一貫性が生まれ、個々の成果が受注率の向上につながります。
見込み顧客に関する情報を正確にデータ化し、管理する体制を整えることは、効率的な営業活動に直結します。
営業担当者の経験や記憶に依存した管理では、顧客の状況や過去のやり取りが共有されず、機会損失につながるリスクがあります。CRMなどのシステムを活用すれば、商談履歴や連絡内容、関心のある商品やサービスなどを一元管理でき、誰でも迅速に顧客対応が可能になります。
情報の蓄積により、受注確度の高い顧客を見極めやすくなり、提案の質やタイミングを最適化できるようになります。
すべての案件に同じ熱量と時間をかけて営業を行っても、リソースの配分としては非効率になります。限られた時間の中で成果を上げるためには、受注確度の高い案件に優先的に取り組む必要があります。
BANT条件がすでに明確で、意思決定者とも接点がある顧客は、優先的にクロージングを目指すべき対象となります。受注確度の高低を判断するには、CRM上でのスコアリングや過去の類似案件の傾向などを活用します。
優先順位を明確にすることで、効率的な営業活動が可能になり、受注率の底上げにつながります。
受注率を高めるには、商品やサービスのスペックを伝えるだけでは不十分です。顧客が抱えている課題を深く理解し、その課題に対する解決策として提案を行うことが求められます。
単に「コスト削減が可能」と伝えるのではなく、「人件費を◯%削減できる具体的な施策として◯◯の導入を提案する」といった具体性が説得力を高めます。
顧客の業務プロセスや意思決定の背景にまで踏み込み、課題と期待に応える提案を行うことで、競合との差別化が図れ、受注につながりやすくなります。
どれだけ優れた提案を行っても、最終的なクロージングが適切に行われなければ受注には至りません。
クロージングとは、顧客に契約の意思決定を促すプロセスであり、営業活動の中でも特に高いスキルが求められます。強引な売り込みではなく、顧客の意思決定を後押しする形で進めることが理想です。
選択肢を提示して決断しやすくする、導入後のメリットを再確認する、稟議のサポート資料を提供するなど、相手の立場に立ったクロージングが成果を左右します。
体系的なロールプレイやナレッジ共有によって、チーム全体のスキル底上げが可能です。
顧客が契約の意思決定をする上で重視するのが、価格と導入スケジュールの明確さです。不明確な見積もりや不確定な納期は、信頼を損ね、競合他社に優位性を与える原因となります。
見積書や提案書の段階から、費用の内訳や納品までの工程、導入にかかる工数などをできるだけ具体的に提示することが重要です。顧客が導入後の運用イメージを明確に持てるようになることで、不安が払拭され、受注につながりやすくなります。
営業担当者が技術部門やプロジェクトマネージャーと連携し、現実的な提案を行うことが求められます。
営業活動では、商品力や価格だけでなく、営業担当者と顧客の関係性も成約に大きく影響します。
信頼関係を築くためには、一方通行の情報提供ではなく、双方向の丁寧なコミュニケーションが不可欠です。具体的には、顧客からの質問への迅速な対応、提案内容の丁寧な説明、定期的なフォローアップが挙げられます。
また、商談の記録や進捗状況をチーム内で共有し、一貫性のある対応を行うことも信頼構築に有効です。顧客が安心して相談できる存在になることで、競合に負けない関係性を築き、受注率を向上させることができます。

営業活動を効率化し、受注率を高めるためには、ツールの導入と活用が欠かせません。特に、SFA(営業支援システム)、CRM(顧客関係管理システム)、MA(マーケティングオートメーション)の3つは、営業プロセスの可視化や情報共有、アプローチの最適化を実現するうえで重要な役割を果たします。各ツールは機能や目的が異なるため、導入時には自社の営業課題に応じた選定が求められます。
目的 | 特徴 | 活用シーン | |
|---|---|---|---|
SFA(営業支援システム) | 営業プロセスの可視化と管理 | 商談状況、進捗、KPIをリアルタイムで記録・分析可能 | 営業活動の見える化・改善 |
CRM(顧客関係管理) | 顧客情報の一元管理と関係性構築 | 顧客履歴・属性・接点履歴の蓄積 | 顧客フォロー、リピーター育成 |
MA(マーケティングオートメーション) | 見込み顧客の育成・スコアリング | メール配信やWeb行動の自動追跡 | ナーチャリングとホットリードの発掘 |
これらのツールを組み合わせて活用することで、案件の受注確度が高いターゲットへの集中、適切なタイミングでのアプローチ、チーム全体でのデータ共有が可能になり、受注率の向上に直結します。
SFA(Sales Force Automation)は、営業プロセスを可視化し、効率化するためのシステムです。
商談の進捗状況や訪問履歴、受注見込みなどを一元管理でき、営業担当者が実施している活動をリアルタイムで把握できます。KPIの進捗管理も容易になり、目標達成に向けた行動計画の修正や重点ポイントの明確化が可能です。
マネージャーにとっては、チーム全体の営業状況を把握しやすくなり、的確な指導やサポートが行えるメリットがあります。属人的な管理から脱却し、組織としての営業力を底上げできる点が受注率向上の鍵となります。
CRM(Customer Relationship Management)は、顧客との関係を長期的に構築・強化するためのシステムです。
企業が持つ顧客情報を一元的に管理することで、過去の商談履歴や問い合わせ内容、契約内容などを即座に参照できます。担当者が変更になった場合でもスムーズに引き継ぎができ、対応の質を落とすことなく関係を継続できます。また、誕生日や購入履歴に応じたフォロー施策など、パーソナライズされたコミュニケーションも実現可能です。
こうした細やかな対応により、顧客満足度とロイヤルティが向上し、再受注や紹介による新規顧客獲得につながります。
MA(Marketing Automation)は、見込み顧客を効率的に育成し、受注につながるホットリードを営業へ引き渡す仕組みを構築するツールです。
メール配信、Web行動のトラッキング、スコアリングなどを自動で行うことで、顧客の関心度や購買意欲を把握できます。資料請求後に一定期間接触がない顧客にはリマインドメールを自動送信するなど、継続的な接点を維持できます。
営業担当者は、受注確度の高いリードに集中できるため、商談化率や成約率の向上が期待されます。マーケティング部門と営業部門の連携強化にも寄与する点が、MAの大きな特徴です。
営業活動において「受注率を上げるにはどうすればよいか」「成約率との違いは何か」「確度をどう判断するのか」など、多くの企業が抱える疑問にお答えします。ここでは、よくある質問とその解決策について、実務に役立つ形で分かりやすく解説します。
受注率を上げるには、まず顧客ニーズの深い理解が欠かせません。そのうえで、受注確度の高い見込み顧客に営業リソースを集中し、提案の質を高めることが重要です。
また、営業プロセスを明確にし、各ステージでのKPI(商談数、クロージング数など)を設定することで、改善ポイントを把握しやすくなります。
さらに、SFAやCRMなどのツールを活用し、顧客情報と商談履歴を一元管理することも受注率向上に有効です。
成約率を上げるためには、商談時の信頼関係構築と、顧客に対する提案の的確さが求められます。顧客の課題を正確に把握したうえで、自社のサービスや製品がどのようにその課題を解決できるかを明確に提示しましょう。
また、競合との差別化ポイントを強調することや、スピーディーな見積もり提示・フォローも有効です。特にクロージングのタイミングや手法の改善により、受注直前の離脱を防ぐことができます。
受注確度を高めるには、商談の初期段階で顧客のBANT条件(予算、決裁権、ニーズ、導入時期)を正しく確認することが重要です。これにより、見込み顧客の本気度を見極め、確度の高い案件に優先的に取り組むことが可能になります。
また、顧客との関係構築に注力し、定期的なコミュニケーションを取ることで、顧客側の不安や疑問を事前に解消し、最終的な受注確度を引き上げることができます。
受注率10%とは、提案や商談を行った案件のうち、実際に成約に至った割合が10%であることを意味します。
たとえば、月間で50件の商談があった場合、そのうち5件が成約すれば受注率は10%となります。この数値は、業界や営業スタイルによって異なるため、自社の営業状況や目標と照らし合わせて評価する必要があります。

この記事をかいた人
八並 嶺一
エンタープライズセールスの専門家。株式会社エージェントにて、大手企業との取引量を増やし、事業拡大を牽引。その実績を背景にCHRO、COOを歴任し、組織・事業の両面から経営をリード。2020年の株式上場を経験する。2022年、インキュベーター株式会社を創業。自身が現場と経営の両軸で培ってきた「大企業営業」の知見を再現可能な仕組みに昇華すべく、2025年にエンタープライズセールス特化型サービス「アカマネ」をリリース。アカマネを通じて属人化しがちなエンタープライズセールスを、再現性ある営業基盤へと変革する支援に取り組んでいる。